アンゴル=モアでSTABO索具

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2009.12.11

+ 犬は勘定に入れません

犬は勘定に入れません 上―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 (1) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-6)(コニー・ウィリス/松尾たいこ/デザイン:岩郷重力+WONDER WORKZ。/大森 望)

コニー・ウィリスのタイムトラベルもの。『見張り』から広げたネタなのかな。『ドゥームズデイ・ブック』と反対に、こちらはコメディ。

物語前半を牽引する謎解きと、主人公たちの行動そのものが仕組まれたものなんだろうということまでは察しがついたので、文学の素養がないこともあって最初から四分の三くらいは混乱と噛み合わない会話にまだるっこしさしか感じなかったのだが、それは最後の四分の一を楽しむための代償。

混乱、というと、コニー・ウィリスのこのシリーズは混乱が破局につながらない。『ドゥームズデイ・ブック』のときは、悲劇が進行している過去と対照的に現代は安閑としているかに思わせつつ、並行して現代に破局が訪れる予感を醸し出すことで、時の狭間にいるかのような主人公の不確かさが強調され緊迫感があったのだが、結局、現代は混乱していただけでそのまま物語を終えた抑制に不思議な感じがあった。『犬は勘定に入れません』では、同様の混乱がスラップスティックコメディ的な取り扱いであることがはっきりして、納得はできる。同時に、それらがタイムトラベルの仕掛けですべて括られうるところが物足りなくもあった。しかしそこは、錯誤というか、行き違いによる混乱そのものの描写こそがストーリーテリング以上にコニー・ウィリスの力量を示しているのだ、と捉えるべきだろう。

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