アンゴル=モアでSTABO索具

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2013.05.07

+ 日本の雇用と労働法

著者は、職務の定めのない雇用契約に基づく日本の雇用形態をメンバーシップ型と呼び、職務が明確な他国のものと区別している。著者のおなじみの論考を、本書は歴史や現行の人事システムなど縦横から視点を変えて概括したもので、俯瞰して労働問題を考えるのにとてもよい。

労働法制自体は世界標準のジョブ型であるにもかかわらず、司法の判断で違った形態になっているところが日本の労働問題の面倒なところで、つまり、国民の意思が直接反映する立法府だけでケリがつく話ではないということだ。社会生活の基本である契約が、こうも軽んじられているように見える実態は、なにも悪意に基づくものでなく、それぞれの局面における温情のようなものが生み出した結果なのだとすると、いっそう複雑な気持ちになる。もしかすると解決のためには、ある種のパターナリズムとの決別が個人レベルで求められるのかもしれない。

なお、脱社畜との主張や社畜批判が近年喧しいが、その手の批判の弱さは、社畜との選択が実は合理的判断によるものであるとの認識がなさすぎることであるように思う。貧しい労働環境を生み出した一因が司法判断の積み重ねであるなら、空気を変えようとする意気込みは無駄だとは言い切れないものの、政策変更を求める動きとしては間接的すぎて弱い。本書における問題点を踏まえた上で精神論以外の原因を争点にできれば、恨みつらみの羅列でなくより鋭い批判となるのではなかろうか。

日本の雇用と労働法 (日経文庫)(濱口 桂一郎)

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